非人称のsiか受身のsiか

イタリア語の文法の勉強をしてしばらくすると、「非人称のsi」というのを習う。これは「一般的には〜である」「人は〜である」というような主語を特定しない文章を作りたいときに使う。例えばこんな感じ。

1-1)Si mangia bene in quel ristorante. あのレストランはおいしい

1-2)Si va al mare in estate. 夏は海に行く

非人称のsiを使うにはいくつか条件がある。まず動詞は自動詞でなければならず、目的語を持ってはならない。そして動詞の形は三人称単数となる。

これを習ったときに、「動詞は自動詞でなければならない」ということにすごく不便だな〜と感じた。自動詞以外でも一般的なことを言いたいときはどうすればいいんだろう?と。

そして次に「si+他動詞」という構文をならった。しかし動詞が他動詞になると、このsiは「受身のsi」とイタリア語の世界では呼ぶ。

2-1)Si beve molto il caffé in Italia. イタリアではコーヒーをたくさん飲む。

2-2)Si mangiano molto gli spaghetti in Italia. イタリアではスパゲッティをたくさん食べる。

この構文では動詞の形は目的語が単数か複数かで決まる。2-1)では目的語がil cafféと単数なので動詞はbeveと三人称単数、2-2)では目的語がgli spaghettiと複数なので動詞はmangianoと三人称複数の形になっている。

この2つの文は「受身のsi」を従えているが、意味的に受身の文なのだろうか?上記の1-1)1-2)の文章と同様に、「一般的」なことを言ってるように私には思える。それなのになぜこれを受身のsiと呼ぶんだろう・・・と常々疑問に思っていたことをちょっと考えてみた(ちなみにこの先に書くことは私の頭の中で考えたことで、イタリア語の先生などに確認したことではありませんので何の裏付けもありません)。

この文章はどうだろうか?

2-3) Cosa mangiamo? Noi si mangia la pizza. 何を食べようか?私たちはピザを食べよう。

これはレストランにいるという状況でSi mangia la pizza.と言えば、「私たちはピザを食べよう、注文しよう」的な意味であり、受身の文章ではないと思う。

ではなぜ、わざわざ「非人称のsi」と「受身のsi」という非常に似た文法事項を動詞が自動詞か他動詞かで呼び方を変えているのだろうか?

それは受身のsiでは「目的語の数によって動詞の形が決まる」ということに理由があるように思う。

イタリア語の文法には、「動詞の形は主語の人称、単数か複数かで決まる」というルールがある。2-2)Si mangiano molto gli spaghetti in Italia.の文章でgli spaghettiによって動詞が決まるとすると「目的語」が動詞の形を決め、「主語が動詞の形を決める」というルールと整合性がとれなくなる。しかしもしこれを受身の文と見なせば、受身の文とは目的語を主語として書き換えた文だからgli spaghettiが主語で動詞はそれに合わせて形が決まることになり、「動詞の形は主語の人称、単数か複数かで決まる」というイタリア語文法のルールは保たれる。「受身のsi」という呼び方は意味からきたのではなく、もっぱらこの「主語によって動詞の形が決まる」というイタリア語文法のルールを守るためにつけられた呼び方なのではないだろうか?

非人称のsiの場合、動詞は自動詞だけだから目的語がない。目的語のない文章は受身の文にならない。だからこちらのsiを受身のsiと呼ぶことはできない。そのためこの似たようなsiに、「非人称」「受身」と別々の名前を与えたのではないだろうか。

イタリア語では再帰代名詞のsi、非人称のsi、受身のsiとsiに遭遇する場面は多い。イタリア語学習者はその度に「このsiは何か?」と注意を払う必要がある。意味をとる時に重要なのは再帰代名詞のsiとそれ以外を見分けることで、非人称のsiと受身のsiは意味的に言えば、「非人称のsi」とひとくくりにして「非人称構文」と理解していいと思う。非人称のsiと受身のsiでは動詞の形の決まり方が違う、という文法運用面での違いだけに注意を払っていればいいのではないだろうか。

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12 thoughts on “非人称のsiか受身のsiか

  1. 非人称のSiか受身のSiか、は文の意味で区別するのは無理だと私も思います。名前はあくまで便宜的なものですよね。 

    ところで、2-3に出てきた 「Noi si mangia la pizza. 」には驚きました。こんな言い方も出来るんですか?ちなみに形式的再帰動詞と捉えて、Noi ci mangiamo la pizza.っていうのも可能なのでしょうか?

    • mariaさん、こんばんは

      >名前はあくまで便宜的なものですよね。
      イタリア語の文法書(数年前に買って、はじめて今日このページを開きました^^)では”Si spersonalizzante”という言葉が使われ、その下に動詞が自動詞か他動詞かでimpersonaleとpassivanteがあると書かれていました。spersonalizzanteはまさしく非人称ってことですよね。こちらの方が誤解がなくて良さそうな感じがします。

      でも私の場合、受身のSiって教えられると、受身で訳さなきゃ、受身としてとらえなきゃっていう呪縛がまとわりついちゃうんです。

      Noi si mangia la pizza.は私もびっくりしました。Noiって言っているのに、si mangiaだなんて!
      でもフランス語でNous on va au cinema.(はっきり覚えていませんが)といったような文を読んで、
      あ、こういう使い方するんだって納得しました。
      (今ざっと「ソフィーとジル」のスキットを見たのですが、ステップ46でNous-memes, on ne sait pas trop.という文がありました。六鹿先生はこのフレーズについて何か説明されていましたっけ?今度の放送で注意してみようと思います。)
      Noi ci mangiamo la pizzaと言い換えできるか、あるいは単純にNoi mangiamo la pizzaなのか。。。自信がないので今度ネイティブの方に聞いてみますね。

  2. tiemme78さん、はじめまして。

    ちーずさんのブログからこちらへお邪魔しています。
    イタリア語のを始めて7年ぐらいですが、ここ数年は独学、というより、ほとんど何もしてない状況です。
    せっかく覚えた文法を忘れかけているので、ちーずさんや、tiemme78さんのブログを見て、刺激を受けているところです。

    さて、受け身と非人称のsiに関して。
    確かに、イタリア語を始めた頃は、受け身か、非人称か、と気になっていましたが。
    最近は感覚的に使っている気がします。
    使い分けている、という感覚はないです。
    ある程度慣れてくることも必要でしょうね。

    そして、質問なのですが。
    例文にもある

    Noi si mangia la pizza.

    この形は正直初めてです。
    トスカーナ弁かとも思ってしまうのですが。
    非人称のsi(あえて区別するなら)があるのに、あえてnoiを置くことに特別な意味はあるのですか?
    教えていただけると、幸いです。

    広い範囲でのイタリア語読解をされてるので、素晴らしいと思います。
    語学関係の仕事をされているのでしょうか?
    それとも学生さんでしょうか?
    私はまったく語学とは関係のない仕事をしています。
    仕事をしながら、勉強の時間を見つけることに、苦労しているところです。

    また、お邪魔させてください。
    それでは。

    • rossoneraさん はじめまして
      コメントありがとうございます。勉強の励みになります。

      受身のSi、自分でイタリア語で話す場合はちゃんと非人称の意味として使えているんですが、訳すときはどうもsiがあると身構えてしまいます。

      Noi si mangia la pizza. これはイタリア人の方が実際に言っていた文を載せました。その方はサルデーニャの人ですが、
      坂本先生の「現代イタリア文法」には「動詞の非人称形は、ときとして一人称複数を表すこともある、また、ときとして主語のnoiをつけることもあるが、これはトスカーナ方言的用法である」って書いてありますね。
      しかもこの本では動詞が自動詞の場合の例文しか載っていないから、他動詞では使えないのかな〜とちょっと不安になってきました。
      この点についても今度ネイティブの方に確認してみようと思います。

      私も仕事はイタリア語とはまったく関係のないことをしています。語学の勉強は趣味です。でも趣味に割ける時間は無限にあるわけではないので、私も勉強時間のやりくりに苦労しています。blogは自分の勉強のペースメーカーみたいな意味ではじめました。よろしかったらまたお時間のあるとき覗いてみてください。

  3. si に関しての解析、とても為になりました。
    ご存知のように、私は、これがいつもしっくりこなくて、
    さんざん、いろんなところに愚痴のように書き込みをしてきましたが、
    tiemme78さんのこの解説を読んで、やっと落ち着けた感じがしています。
    他のどの文法書にもこれほどすっきりとした解説はなくて、それで混乱していました。
    tiemme78さんには、本当に分かりやすい説明でいつも助けてもらっています。

    それで確認なんですが、非人称と受身のsiの区別はそれほどこだわらなくてもよい(非人称というひとくくり)という認識でよいですよね・・・。
    あとの難関は、再帰動詞のsiなのか、非人称のsiなのかをきちんと区別できるようにすること、ですよね・・・。
    今までの癖で、siが出てくるとあいかわらず身構えてしまうのですが、
    これがすんなり体にしみこんでしまう日がくるのを待つしかないです。
    また教えてください。よろしくお願いします!

    • ちーずさん、こんばんは
      上にも書いたのですが、イタリア語の文法問題集では”Si spersonalizzante”となっていました。こっちのほうが「主語を特定しないSi」って感じで理解しやすいですよね。
      イタリア語で、たとえば「公園にたくさんのこどもが見える」と言いたいとき、どう言いますか?この場合だったら自然に受身のsiを使ってsi possono vedere tanti bambini nel parco.って言えませんか?受身のsiを使っていても、話しているこちらの気分では受身ではなく非人称のsiを使っている感覚ではないでしょうか?こういうのをたくさん書いたり話したりしていけば慣れるかなと思います。

      再帰代名詞のsiと非人称のsiの区別は、再帰動詞のほうが数としては少ないからその中でもよく使うのをまとめるのがいいかな〜と思います。と言っても、私も勉強中の身で偉そうなことは言えませんが^^ こちらこそ、これからもよろしくお願いします。

  4. tiemme78さん、

    お返事ありがとうございます。
    坂本先生の文法書、私の苦手な書体で印字してあるので、
    どうしても分からないことがあるときしか開いていません。
    これでは、せっかくの本も台無しですね。
    今一度、自分で開いてみます。

    私は語学に興味がなく、理系が好きでした。
    偶然イタリア語を始め、夢中になってから、語学も楽しいな、と感じ始めています。
    言葉で伝えることの楽しさ。
    それがあるからこそ、続けたい、と思えるんだろうな、と。
    不思議な感覚です。
    仕事が…、というのは、きっと私の言い訳ですね。
    毎日少しずつでも本を読もうと思いました。

    tiemme78さんは、IO NO という本をご存知ですか?
    映画化もされているのですが。
    私のお気に入りの一冊です。
    初めてローマに語学留学したときに、偶然見た映画の原作。
    本屋に早速買いに行き、辞書なしで一気に読み終えた、唯一の本です。
    本当は辞書を使って、丁寧に読むべきなのでしょうけれど。
    どうしても、結末を知りたくて、夢中になって読み終えたのでした。
    未だに、読み直している本です。
    筆者はLorenzo Licalzi
    彼の2作目が日本でも翻訳されて発売されているのを、本屋で見かけたことがあります。
    IO NO よろしかったら、手にとってみてください。

    それでは。

    • rossoneraさん
      坂本先生の文法書の書体苦手ですか?私は白水社の参考書の飾り気のない感じをけっこう気に入っています^^

      「IO NO」という本(映画)もLorenzo Licalziという作家もはじめて聞きました。注意してみますね。読書は私もあまり辞書をひかないでストーリーに身を任せて読むことが多いです。rossoneraさんは「どうしても、結末を知りたくて、夢中になって読み終えたのでした」という外国語の本に出会えたなんて素晴らしいですね。

      私にとっては以前に書いた「Il grande cocomero」という映画が何度も見返したくなる、イタリア語の勉強を後押ししてくれた作品です。先日DVDを取り寄せて久しぶりに見て、台詞や音楽の入るタイミングをかなり覚えていて懐かしくなりました。

      私もイタリア語の勉強は趣味なので、とくにゴールも決めていないし、お金と時間をどこまで投資すべきか悩むところです。

  5. 今講読クラスで読んでいる本に、先日話題に上っていたnoi+非人称のSiの表現が出てきました。ご参考までに、本文の該当箇所を引用します。

     Dove sono finiti tutti? Negli anni della giovinezza e della maturita’, tutto e’ ancora movimento. Poi, senza che noi si sappia nemmeno quando e come accade, il movimento rallenta, diviene appena percettibile, e infine– ed e’ un colpo di mano arbitrario– ci esclude.

    小説の舞台がトスカーナなので、きっと方言的なものなんだと思いますが、せっかくの機会なので、先生に質問して文法的に説明してもらうつもりです。

    • mariaさん
      すごい偶然!noi+非人称のSiの表現、先生のご説明是非教えてください。ここの引用文だと他動詞でnoi+siを使っていますね。ということは自動詞でも他動詞でも大丈夫ということでしょうか。引用文の内容、tutti、movimentoなどが何を指すのかよくわからず、難しい印象を受けました・・・。

      今日フランス旅行から帰ってきました。1週間フランス語の先生のお宅にお邪魔して、フランス語漬けだったので、ネイティブにnoi+非人称のSiの表現を聞こうと思っていたこと、すっかり忘れていました。フランス語の先生に”Nous, on va au cinema”のことも聞けばよかった!ホントにすっかり忘れていました^^;

      • noi+非人称のSiの表現についての先生の説明、すっかり遅くなってしまいましたがご報告を。。。結論から言うと、「トスカーナ地方の方言だ」という説明で終わってしまったのですが(^^ゞ、ただニュアンスとして、「人は皆そうであり、私たちもその中に含まれる」って感じらしいです。いずれにしても、上記の箇所にあるsenza che noi si sappia は、スタンダードな表現の「senza che noi sappiamo」と意味は同じとのことです。
        (何の目新しい情報もなくて申し訳ありません。。。(^^ゞ)

        フランスでのお話も、是非お聞きしたいです。先生のお宅でフランス語漬けなんて、、とっても内容の濃い一週間だったことでしょうね。

      • mariaさん、noi+非人称のSiの解説ありがとうございます。イタリア語の先生から解説していただけてホッとしています。私は今はイタリア語を習いに行ってないので、プロの方の解説を伺う機会がないので。noi+非人称のSi=「人は皆そうであり、私たちもその中に含まれる」だと、私の書いた例文Noi si mangia la pizzaとはまたちょっとニュアンスが違いますね。ピザを食べるのは「人は皆そうであり」ではないですもんね。フランス語のNous on va au cinemaともやっぱり違いますね、こちらも映画に行くのは特定の「私たち」だけですものね。

        フランスでは、5日間午前は3時間の個人レッスン、午後は近所のお城や修道院に連れて行ってもらったりとみっちりフランス語漬けでした。おかげで、OuiとMerciは(それだけかい!)無意識で出るようになりました。フランスの話も書きたいと思いつつ、このブログはquaderno d’italianoと看板を掲げているので、イタリア語とフランス語(あるいはイタリアとフランス)の違いなんかについて追々書けたらなぁと思っています。

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